杭州アジア大会、卓球男子シングルス準々決勝。足に異変があり、満足なプレーができない中でも 最終ゲームまで戦い抜いた張本智和選手。その裏にはパリ2024オリンピックに懸ける思いがあった(2023年10月2日インタビュー)。
3対1で5ゲーム目を迎えるときに、少しアキレス腱や太腿が張ったり、攣ったりするような感じがしました。まだ軽症だったので、なんとか第5ゲームを取り切って逃げ切りたいという中で、あと1点2点というところで取り切れませんでした。あのゲームでデュースになり、そしてそのゲームを取られた時点でプレーを続けるのはほぼ不可能だったので、やはり試合の鍵は5ゲーム目でしたし、全体的に見れば自分の体力にまだまだ課題が残ったのかなと思います。
3対3になった時点で、監督からも「無理して続けなくてもいい。来週・再来週と試合は続くから、ここで悪化して全部出られなくなるよりは早く治した方がいい」と言われました。ですが、オリンピックに臨むぐらいの気持ちで杭州アジア大会に臨んでいるので、これがもしメダル決定戦もしくは決勝だったり、オリンピックだったりと考えたときに、ここでは棄権しないだろうと思いました。ですので、負けるとしても、たとえ自分が0点で負けたとしても最後までやり切りたいと思いました。もしかしたら何かが起こるかもしれないですし。立って歩ける限りは続けたいと思いましたし、最終ゲームは何とか最低限のプレーはできましたので。勝てないことは受け入れられたのですけど、最後までやり切りたかったと思いました。
大会の形式や、シングルス・団体など、ほとんどオリンピックに似たような環境ですし、パリ2024オリンピックの前哨戦だと思って臨んでいました。やはりここでのプレーが、パリ2024オリンピックにも直接的に繋がると僕は思っていました。これがもしオリンピックのシングルスの3位決定戦・準決勝決勝だったときに、立っていられる限りは絶対に自分はプレーを続けると思います。杭州アジア大会だけを見れば棄権して良かったのかもしれませんが、人間として負けたくありませんでした。相手も多分、僕が怪我してやっている中でやりづらいところがあったと思います。そこは本当に申し訳ないと思いますけど、やっぱりそれも含めて卓球だなと思うので。やはり最後に負けたことは悔しいですけど、やり切れたのは最低限良かったのかなと思います。技術・メンタルだけが卓球ではなく、体があってこその卓球なので、全体的に見たときに、今大会は相手よりも体の部分が自分は劣っていたのかなと思います。この大会も大きな経験の一つですし、これがパリ2024オリンピックでのメダルに繋がれば、僕にとっては全然軽いものだと思います。今はこの現実はつらいですが、全てはパリに繋がっていると信じて、本気でシングルス・団体・混合ダブルス全てで、次こそメダルを獲れるように一歩一歩進んでいきたいと思います。
最近、少しずつ大人になってきて、よりオリンピックの価値がわかるようになってきました。今まで小・中学生のときに言っていたオリンピックの金メダルと、今目指しているオリンピックの金メダルというのは全く別物だと思います。同じ目標だとしても、それにどれだけの価値があってどれだけ難しいものであるかというのを今はすごく理解しています。だからこそ、より金メダルを獲りたいですし、獲ったときには今まで感じたことないような感覚になると思います。もうその一瞬の喜びだけでもいいので、それを感じるためにこの1年間を過ごしていきたいなと思います。