誰からも愛される選手に ー TEAM JAPAN一丸となって戦った誇りを胸に抱いて（柔道・混合団体（阿部詩））

世界中の方から応援されて

――混合団体銀メダルおめでとうございます。3年前の東京2020オリンピックではお兄さんの阿部一二三選手とともに、5年前には夙川学院にお邪魔してインタビューをさせていただきました。改めて、パリ2024オリンピックを振り返って、今、どのようなお気持ちか、お聞かせいただけますでしょうか。

　「悔しい」という一言のオリンピックになりました。ただそれよりも、皆さんからの応援や温かい言葉をたくさんいただいて、私は本当に多くの方々に応援してもらっているんだということを改めて感じたオリンピックになりました。

――詩選手に期待するがばかりに、私たちもプレッシャーをかけてしまっていたのではないかと感じています。ぜひ、笑ってください。胸を張ってくださいね。

　はい、ありがとうございます（笑）。

――ここに来るまでにケガもありました。そして悔しい敗北がありました。柔道の一専門家として「阿部詩」というアスリートを冷静に分析して、どのように評価しますか。

　負けてしまうと、どうしてもやってきたすべての過程に対して否定的になってしまいますよね。一からきちんと見直さないといけないとは思うのですが、でも実際には冷静に戦えていました。ただ、改めて反省して改善すべきところは本当にたくさんあるなと今は感じています。

――今はまず少しゆっくりしてほしいと思います。ただ、ロサンゼルス2028オリンピックに向けて「次こそは」という気持ちもあるのではないかと感じています。今、真っ先に何か取り組んでみたいことはありますか。

　今は、本当に何も考えずに休みたいというのが一番です。ただただ相手より弱かったということなので、自分自身のちょっとした甘さを、しっかりと改善していきたいと思っています。

――東京2020オリンピックでチャンピオンになり、JOCシンボルアスリートにも選ばれました。世界から追われる立場となり、注目されることで、いろいろと難しさも増えたと思います。一方で、試合会場では「UTA」コールが巻き起こりました。世界中のいろいろな人から愛される柔道家であることを改めて感じることができたオリンピックにもなりましたね。

　そうですね。皆さんすごく温かくて、こんなにも世界中の方から応援されているとは、私も本当に思っていなかったですし、そういう存在となれたということについては、自分でも少し誇らしく思えます。私は昔から「誰からも愛される選手になりたい」と思ってきました。自分自身、積み重ねてきたことが、少しずつ形になってきているのかなとは感じます。

一丸となった14人の柔道家たち

――東京2020オリンピックは新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて無観客での開催となりました。パリ2024オリンピックは、有観客での開催となり、しかもフランス人は日本人顔負けの柔道愛があり、柔道に対して目が肥えていたと思います。満員の会場で柔道をしてみて感じたことはありましたか。

　全然違ったオリンピックだと感じました。柔道という競技がこんなに人気があるのかと感じさせられるほど、声援が本当に大きくて、すごく楽しかった面もありましたし、あのような環境で試合をするということはあまりない経験だったと思うので、すごく素晴らしい経験をできたと思います。

――選手村も、前回とは違ってマスクをしなくて過ごせていますよね。ようやく体験するオリンピックらしいオリンピックでしょうか。

　ピンバッジを交換し合ったり、選手村らしい食堂だったり、東京2020オリンピックとは全く違います。すべて、「これが本当のオリンピックだな」ということはすごく実感しています。

――昨日の混合団体では、素晴らしい試合、素晴らしい柔道を見せていただきました。ご自身の中では、どんなふうに試合を振り返っていますか。

　柔道チーム全体で戦う団体戦だったのですが、TEAM JAPANとして戦えたことがすごくうれしかったです。銀メダルという悔しい結果でしたが、全員が一丸となって戦えたことはすごく誇りに思います。

――本当に素晴らしい戦いでしたね。残念ながら、あっという間に時間になってしまいました。これからも、いろいろプレッシャーに感じ過ぎず、柔道を楽しみながら、そして柔道の魅力を伝えていってください。本当にありがとうございました。そして、おめでとうございます。

　ありがとうございました。