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2024.10.08 Paris2024 Medalists’ Voices

東京の借りをパリで返す ー 3年越しの無念を晴らし大逆転でつかんだ悲願の金メダル(体操競技・男子団体)

体操競技男子団体で悲願の金メダルを獲得したTEAM JAPANの5人(PHOTO:Reuters/AFLO)

体操/体操競技 男子団体

東京2020オリンピックの体操競技男子団体では、わずか0.133点差及ばず銀メダル獲得となったTEAM JAPAN。パリ2024オリンピックではその無念を晴らし、最終演技となった鉄棒でライバル・中国を大逆転して悲願の金メダルを獲得した。栄冠をつかんだ5人に話を聞いた。

東京の悔しさをバネに

――皆さん、おめでとうございます。金メダル獲得から少し時間がたちましたが、改めて、どんな感想や実感をお持ちでしょうか。

<岡> 最高です。ありがとうございます。

<杉野> 金メダルを首にかけてもらった時が最高に幸せを感じた時間でした。この5人で最後の最後まで戦えたということが一生の財産になると思っているので、本当にみんなに感謝しています。応援の力もすごく感じることができて、本当に「最高」という言葉が一番合っているかなと思っています。

<谷川> 東京2020オリンピックでは銀メダルで、その悔しさがあってやっととることができた金メダルなのでとてもうれしいですし、最高だなと感じています。

<萱> 「オリンピックで金メダルをとりたい」というのが小さい頃からの夢でした。そこからこう、リオデジャネイロオリンピックには出られず、東京オリンピックでは0.133ポイント足りず……という中で、今回やっと金メダルをとることができて、夢をかなえることができて本当にうれしい気持ちでいっぱいですし、チームのメンバーに感謝しています。

<橋本> 東京2020オリンピックでは惜しいところで団体金メダルを逃して、この3年間、団体金メダルをとるために頑張ってきました。もちろんほかにも目標はありましたが、みんなのためにチーム一丸となって戦えて、団体金メダルをとれたことが本当に幸せでした。

――ありがとうございます。改めて、試合を振り返ってください。ちょっと苦しい展開になりました。そうした中で、キャプテンの萱選手が皆さんを鼓舞しているように見えました。萱選手はどのような気持ちで、どのように声をかけていらしたんでしょうか。

<萱> 苦しい展開でしたので、僕自身、本当に諦めそうになる場面もあったのですが、それでもやはり「絶対に諦めちゃダメだ」と思っていました。おそらく、みんな「諦めない」という気持ちだったとは思うのですが、あえて互いに声を出し合い、みんなで励まし合ったからこそとれた金メダルだと思います。もちろん、演技の面でしっかり自分の役割を果たすことに加えて、コミュニケーションだったり、声出しだったり、演技以外の部分が金メダルにつながったかなと感じます。

――萱選手と谷川選手は同級生でチームメイトですね。同じく同級生の白井健三さんが2014年のインターハイで表彰台を独占した3人のことを取り上げ、「インターハイからちょうど10年。同期で当時の高校No.1.2.3が全員オリンピックチャンピオンになりました」とSNSで投稿されていらっしゃいました。そこも胸が熱くなるところですが、スペシャルな同級生としてお互いのことをどんなふうに思っているのでしょうか。

<萱> 僕も航とは同級生で、大学や今の所属先も一緒で、チームで何回も組ませていただいてきました。安心感があるというか、心のよりどころというか、落ち着く場所のようでもあって。だからこそ自分も楽に演技ができています。オリンピックという舞台で日の丸を一緒に背負えたこと、同世代として切磋琢磨して同じチームで金メダルをとれたこと、それは本当にすごくうれしく思います。

<谷川> 幼い頃、小学生からずっと一緒で、お互い何でも知っていますし、信頼できる選手なので、こうやって一緒にオリンピックに出て、一緒に金メダルをとったというのは、すごく感慨深いなと感じます。

――杉野選手と岡選手はこちらも同じチームメイトですが、このパリ2024オリンピックに初めて参加されて、どのように感じましたか。

<岡> 初めてのオリンピックでしたが、すごく楽しむことができました。周りからも「楽しんでやれ」とずっと言われていましたが、あの緊張感の中で楽しんで演技をできたことは良かったなと思います。

<杉野> 僕も初めてのオリンピックだったのですが、 僕ら二人以外は東京2020オリンピックを経験していますし、その悔しい思いも背負いながらのパリ2024オリンピックでした。自分たちもそこに向き合っていきたかったですし、日本の体操が一番であることを絶対に証明したい思いでした。初出場だからということではなく、金メダルに向かう思いだけでやってきていたので、そういう中で自分のパフォーマンスを出し切る方法などを意識して日々の練習を積み重ねてきたことが今回の結果につながったと思います。

――ありがとうございます。岡選手はチーム最年少ということですが、チームの中での居心地はいかがですか。皆さんに優しくしてもらっていますか。

<岡> ノープロブレム。問題ない、問題ない、問題ない(笑)。

橋本大輝選手(PHOTO:Naoki Nishimura/AFLO SPORT)
岡慎之助選手(PHOTO:Naoki Nishimura/AFLO SPORT)
萱和磨選手(PHOTO:Reuters/AFLO)
杉野正尭選手(PHOTO:Reuters/AFLO)
谷川航選手(PHOTO:Naoki Nishimura/AFLO SPORT)

互いにベストを出し合いたい

――橋本選手にお伺いします。先ほども少し触れられていましたが、個人の目標に関しては、ご自身としても納得できていない部分もあったと想像します。戦う中で難しさを感じたポイントはあったのでしょうか。

<橋本> 一番は準備不足だと思っています。そこが結果を出せなかった最大の要因で、自分でもわかっています。むしろ、僕にとってパリでの一番の目標だった団体金メダルを達成できて良かったと思っています。ここまで来るのも大変でしたし、 みんなのために戦えたことが今回本当に良かったことだと感じます。

――鉄棒の演技で着地した後、ものすごく大きなガッツポーズをされていた姿が印象的でした。最後の演技を終えてよぎった特別な思いはありましたか。

<橋本> 一人で金メダルをとるよりも、みんなでとった時の方がうれしいですよね。周りに笑顔で笑い合える仲間がいるからこそ、みんなで金メダルをとりたかったです。5人各個人が、そして、チームスタッフ全員も含めて一致団結して金メダルをとりにいくので、 自分一人では味わえないみんなの喜びがありますよね。それを達成するためにチームを鼓舞するという気持ちはありましたが、僕はあまりそういう表現ができていなかったと思います。むしろ、他の選手の方がそういう表現が多かったのではないでしょうか。

――橋本選手の後に控えていた張博恒選手の演技前に「静かに」というポーズを示したことがスポーツマンシップに溢れていると話題になりました。あの時、ご自身はどのようなお気持ちだったのでしょうか。

<橋本> 会場はものすごく盛り上がっていましたが、僕らは2番通過だったため、最後にまだ張選手の演技が残っていました。競っている中国選手が残っていたあの場面では、やはりお互いにベストを出し合って終わりたい、だからこそ次の選手が集中しやすいように空気づくりができればという思いもありました。自分自身を出し切る演技ができたうれしさもあったのですが、まだ競技が残っていましたし、試合は何が起きるかわからないので、次の選手のために何かサポートできたら良かったなと思います。

――ありがとうございます。最後、萱選手から「いいチームをつくるコツ」をお伺いできますでしょうか。

<萱> シンプルなことですが、「同じ目標を全員が掲げること」だと思います。僕たちでいえば、最優先事項として「団体で金メダルをとる」ということを掲げました。選手、スタッフ含めてチーム全員がまずその目標に向けてどうしたらいいのかを考え、そこから逆算して練習メニューや合宿等を考えていき、それが現実として本番につながっていきました。目標に基づいて一つになって、そこから逆算していくことが大事なのかなと感じます。

――本当はもっとゆっくりお話をお伺いしたいのですが、残念ながらお時間となりました。お疲れ様でした。そして、おめでとうございました。

<全員> ありがとうございました。

体操/体操競技・男子団体(PHOTO:Reuters/AFLO)

■プロフィール

橋本大輝(はしもと・だいき)
2001年8月7日生まれ。千葉県出身。兄の影響で6歳から体操を始める。18年全日本ジュニア選手権団体で優勝。21年全日本個人総合選手権で初優勝。全日本体操種目別選手権では鉄棒で金メダルを獲得。同年東京2020オリンピックでは個人総合、種目別鉄棒金メダル、団体総合銀メダルを獲得。22年6月、TEAM JAPANシンボルアスリートに選出される。24年パリ2024オリンピックで団体金メダル獲得に貢献。セントラルスポーツ(株)所属。

岡慎之助(おか・しんのすけ)
2003年10月31日生まれ。岡山県出身。4歳で体操を始める。19年世界ジュニア体操競技選手権団体および個人総合で金メダルを獲得。24年NHK杯体操選手権の個人総合で初優勝を果たす。全日本選手権と得点を合算した結果、パリ2024オリンピック出場が内定した。同年パリ2024オリンピック団体、個人総合、種目別鉄棒で金メダル、種目別平行棒で銅メダルを獲得した。星槎大学、徳洲会体操クラブ所属。

萱和磨(かや・かずま)
1996年11月19日生まれ。東京都出身。2004年アテネオリンピック体操競技で後に師事する冨田洋之氏の演技を見て体操を始める。15年世界選手権団体金メダル、種目別あん馬銅メダル。18年世界選手権では団体銅メダル。20年全日本選手権個人総合で初優勝。21年東京2020オリンピックでは、団体銀メダル、種目別あん馬銅メダルを獲得。24年パリ2024オリンピックで団体金メダル獲得に貢献。セントラルスポーツ(株)所属。

杉野正尭(すぎの・たかあき)
1998年10月18日生まれ。三重県出身。6歳で体操を始める。2017年全日本種目別選手権あん馬で初優勝。19年全日本種目別選手権あん馬で再び優勝。22年全日本シニア選手権個人総合優勝。23年全日本種目別選手権あん馬で優勝、全日本シニア選手権個人総合優勝で連覇を果たす。24年パリ2024オリンピックで団体金メダル獲得に貢献。徳洲会体操クラブ所属。

谷川航(たにがわ・わたる)
1996年7月23日生まれ。千葉県出身。6歳で体操を始める。2016年全日本種目別選手権跳馬で優勝。17年世界選手権で日本代表初選出、18年、19年団体銅メダルに貢献。21年全日本個人総合選手権で自己最高の個人総合2位に入りオリンピック代表に選出。同年東京2020オリンピックでは団体銀メダルを獲得。24年パリ2024オリンピックで団体金メダル獲得に貢献。セントラルスポーツ(株)所属。

注記載
※本インタビューは2024年8月1日に行われたものです。

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