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2024.10.08 Paris2024 Medalists’ Voices

後悔もなく満足できた大会 ー 互いにたたえ合い、支え合う良き仲間たちとの戦いを喜びに(スケートボード・開心那)

東京2020オリンピックに続きパリ2024オリンピックで2大会連続の銀メダル獲得を果たした開心那選手(PHOTO:Kazuyuki OGAWA/PHOTO KISHIMOTO)

開 心那

パリ2024オリンピックのスケートボード女子パークで、銀メダリストとなった開心那選手。東京2020オリンピックでは12歳で銀メダルを獲得した史上最年少メダリストは、大きく成長した姿を示してくれた。3年の時を経て15歳になった彼女に素直な思いを聞いた。

ライバルではないよき仲間たち

――2大会連続の銀メダル獲得、おめでとうございます。うれしさとともに、悔しさもあるかもしれませんが、まずは率直なご感想をお聞かせください。

 ありがとうございます。2大会連続でメダルをとれたことは本当にすごくうれしいですし、2位というのは悔しかったのですが、一番の目標だった「自分のすべてを出し切って終わる」ということができました。とくに決勝最後の3本目、自分が今回出したかった全部を入れて滑り切って、またメダルがとれたので本当にうれしい気持ちでいっぱいです。

――ラストの滑りは、ドキドキしながら見ていました。メダルは確定していましたが、金メダルを獲得するためには、かなり高いレベルの技を完璧に決めないといけないというプレッシャーもあったのではないかと思います。精神力の強さを感じました。

 1本目、まずフルメイクして、いい点数をとることができました。2本目はミスしてしまったのですが、3本目を滑る前にもうメダルをとれることは確定していたので、普段よりは気持ちは楽でした。ただ、自分の力を出し切って終わりたいという気持ちもあったので、3本目を滑る前は結構緊張もしていました。

――スケートボード評論家として、開心那という選手を客観的に観た時に、どのように評価されますか。

 自分では完璧とはなかなか言えないですよね。でも、今までの大会では、自分なりに課題を感じたり、ここをこうすれば良かったって思ったりすることが結構あったのですが、今回のオリンピックでは自分の出せる力を本当に全部出し切ったので、後悔もなく満足できた大会でした。これでもしメダルがとれていなくても、後悔はなかったと思います。

――3年前、東京2020オリンピックの際は、四十住さくら選手とともにお話を伺いました。みんなで盛り上げて、みんなで励まし合って、そういう中で最高の滑りを繰り広げる……、すごくいい雰囲気で試合を楽しむスケートボードのよさを感じることができて、心を打たれたことを覚えています。あの感覚が蘇ってくるパリ2024オリンピックでもありましたが、開選手は今回、どのような気持ちで戦っていたのでしょうか。

 自分の滑りに一番集中してはいたのですが、自分より先に滑ってフルメイクした人がいたら褒めたり、「すごかったね」と声をかけたりしていました。オリンピックだからこそ、世界中の人がスケートボードを見てくれて、そのよさをたくさんの人に知ってもらえたのかなと思います。

――金メダルのアリサ・トルー選手(オーストラリア)の滑りも、銅メダルのスカイ・ブラウン選手(イギリス)の滑りも本当にすごかったですよね。ブラウン選手も、最後に逆転した開選手に駆け寄って祝福されていました。表彰台の3人の笑顔も最高でしたよね。

 そうですね。スケートボードならではの雰囲気だと思います。

――東京2020オリンピックの金メダリストで連覇を狙った四十住さくら選手は、予選10位ということで決勝に進むことできませんでした。それでも自分の競技を終えて決勝進出を待っている中のインタビューでは、他の選手たちについて「決勝には進みたいが他人の失敗は祈りたくない」と話していました。また、8位入賞を果たした草木ひなの選手は、予選で3位通過だったこともあって、メダルを期待しながらの決勝だったと思います。TEAM JAPANの3人に入ることも大変という選考段階があって、こうやって同じユニフォームを着ました。どのような存在としてとらえていたのでしょうか。

 大会で戦う以上、同じTEAM JAPANであってもライバル同士になってしまいますが、それでも、自分はライバルと思うタイプではないですし、やはり互いに支え合う存在だと感じています。勝っても負けてもどんな時もみんなでたたえ合うし、一人一人スケートボードのスタイルも全然違いますし、本当にすごくいい関係、よき仲間だと思います。

開心那選手はライバルについて「互いに支え合う存在であり、よき仲間」だと語る(PHOTO:Yohei Osada/AFLO SPORT)

本物のオリンピックを実感して

――3年前、12歳ながらすごく頼もしくインタビューさせていただいたのですが、今回お話を伺いながら、3年間でさらにこれだけ成長するのかと改めて頼もしさを感じています。身長も20cm以上伸びたということですが、ご自身のボディバランスや体幹などにも影響する難しさなどは感じませんでしたか。

 東京2020オリンピックからパリ2024オリンピックまでの期間で身長もかなり伸びて、体重も少し増えたのですが、良くないことは全然ありませんでした。スケートはほぼ毎日滑っているので感覚がおかしくなることもなかったですし、逆に、スピードが出しやすくなったり、踏む力も強くなったり、高い場所でいろいろな技をかけられるようになったり、身長や体重が増えたことで大きいパークでの対応が楽になったことも含めていいことしかないです。

――なるほど。東京2020オリンピックは無観客でしたが、パリ2024オリンピックは満員の観客ですごく盛り上がっていました。観客がいるオリンピックはどのように感じましたか。

 東京の会場は無観客でしたので、スケーター同士やコーチなどと一緒に場を盛り上げていたのですが、パリの会場には本当にすごい数の観客がいました。自分の国だけではなく、いろいろな国の選手を皆さんが盛り上げて応援してくれて、本当にすごく楽しい雰囲気でしたし、これがオリンピックなんだなと思いました。

――そういう雰囲気で、ノリノリで滑れるタイプなのか、緊張してしまうタイプなのか、分かれそうですね。

 観客席が盛り上がってくれると自分の気持ちも盛り上がってプラスになるのですが、3本ともミスしてしまったら終わりなので、やはり1本目はすごく緊張しました。終わった後にすごく盛り上がってくれたのも本当にうれしかったですし、いい雰囲気で最高に楽しかったです。

――選手村にいて、東京とパリとで感じた違いはありますか。

 いろいろな選手たちと交流できるようになりましたよね。また、東京2020オリンピックではパークと選手村の行き来だけで、他の人に会うことができなかったのですが、パリ2024オリンピックでは外出もできますし、大会を観に来てくれた家族や知り合いにも会ってしゃべることもできるので、すごくありがたいです。東京2020オリンピックでは、試合が終わったらすぐに表彰式があって、それで終わりという感じでしたが、パリ2024オリンピックでは観客の皆さんがずっと待っていてくれて、「おめでとう」と声をかけてくれてうれしかったです。本物のオリンピックを体験できた感じがして本当に感謝ですね。

――以前お話を伺った際に、試合前BTSをよく聴いていて、BTSと会いたいとお話しされていましたよね。あの時の願いはかなったのでしょうか。

 いえ、まだかなっていないです。ただ、BTSが好きだったころからずっと音楽を聴いていたBLACKPINKが、今は本当に好きなんです。

――改めて、BLACKPINKと会う機会ができるといいですね。オリンピックが終わった今、まずはゆっくり休んでいただきたいと思いますが、次の目標があれば教えていただけますか。

 次の目標は2028年、スケートボード発祥の地、アメリカ・ロサンゼルスで開催されるオリンピックです。またTEAM JAPANとして出られるように頑張っていきたいですし、あとは大会だけではなく、撮影などいろいろな形でスケートボードの魅力を伝えられるようにやっていきたいと思っています。

――楽しみにしています。大変お疲れの中お話ししてくださり、ありがとうございました。銀メダル獲得、おめでとうございます。

 ありがとうございました。

玉井陸斗選手(PHOTO:MATSUO.K/AFLO SPORT)

■プロフィール

開心那(ひらき・ここな)
2008年8月26日生まれ。北海道出身。5歳でスケートボードを始める。当時小学5年で出場した19年日本選手権女子パークで初優勝を果たす。同年のアメリカで行われた国際大会では3位に入った。21年、12歳11カ月と夏季オリンピックで日本人史上最年少出場となった東京オリンピックでは、女子パークで銀メダルを獲得。23年、千葉で行われたX Games、ローマで行われた世界選手権でともに優勝を果たす。24年パリ2024オリンピックでは2大会連続となる銀メダルを獲得。第一学院高等学校、WHYDAH GROUP所属。

注記載
※本インタビューは2024年7月29日に行われたものです。

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