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2011.12.03 その他活動

第8回スポーツと環境担当者会議を開催

 日本オリンピック委員会(JOC)は12月2日、「第8回スポーツと環境担当者会議」を味の素ナショナルトレーニングセンターで開催しました。JOCスポーツ環境専門委員、スポーツ環境アンバサダー、競技団体の担当者など約70名が参加、スポーツと環境に関する啓発・実践活動の理解と相互連携を図りました。

■第一部
◎環境省における国民運動の展開について

 はじめに、JOCスポーツ環境専門部会の佐藤征夫部会長が「本会議は、各団体が啓発実践活動に関する理解を深め、かつ実践へとつなげるにあたり意見交換を行う場として開催するものです。ご参加の皆様には、活発なご討議を交わしていただき、それぞれの競技団体において、今後の活動に結び付けていただければ幸いです」と挨拶しました。

 第一部ではまず、環境省地球環境局地球温暖化対策課国民生活対策室の相澤和春係長から、環境省の取り組みについて講演が行われました。冒頭、相澤係長は「地球の平均気温は、過去100年間で0.74度上昇し、その上昇のスピードは近年になればなるほど上がっています。ヒマラヤの氷河は、最近ではほんの少ししか無くなってしまい、日本国内でも積雪量は減少傾向にあり、特に外で行われるウィンタースポーツなどでは今後も大きな影響が懸念されます。温暖化には気候が極端化するという面もあります。日本でもゲリラ豪雨と呼ばれる局地的な大雨が近年増えました」と、地球温暖化の現状について説明。そうした状況を踏まえたうえで、政府が取り組む地球温暖化防止国民運動“チャレンジ25”キャンペーンが紹介されました。

 その他、キャンペーン以外の取り組みとして、「スポーツ祭り2011」へのブース出展、Jリーグ・清水エスパルスとのコラボレーションによる“エコ・チャレンジマッチ2011”などを紹介。最後に、「我々は今後もスポーツを通じた呼びかけに積極的に取り組む考えです。ご理解ご協力のほど宜しくお願いします」と訴え、講演を締めくくりました。

◎競技団体における環境啓発・実践活動について
 続いて、公益財団法人日本水泳連盟の佐野和夫会長と公益財団法人日本サッカー協会の玉利聡一氏がそれぞれ活動状況を報告しました。
 まず日本水泳連盟は、紙の大幅な節約などの取り組みが評価され、2011年の「IOCスポーツと環境賞」を受賞。その取り組みの具体的な内容が佐野会長から紹介されました。以下は発言要旨。

「まず、紙の削減対策について。水泳、特に競泳種目では、これまで競技会ごとにスタートリストや競技結果を印刷した大量の用紙が用いられ、廃棄されてきました。そこでレースタイムを記録しているセイコーの協力を得て、2009年頃からシステムを開発しました。レース終了の10秒ほど後には、ホームページや携帯電話を通じて、結果が確認できるというものです。これによって、日本水泳連盟が主催する9つの公認公式大会を通じて、年間189万枚のA4用紙を節約することができました。これに大会前のエントリーや監督会議等での節約分を含めると195万枚に上ります。これを直径20cm、高さ20mの木に換算すると、約150本の木を切らずに済んだことになります。

 これを今、各都道府県の加盟団体に広げようとしています。まだ実現していませんが、もしこれがうまくいけば、年間2億2500万枚の紙、すなわち1万7000本の木を伐採せずに済むのです。実際には年配の役員など、紙がないと不安という方々がいらっしゃるため、完全に紙をゼロにすることはできていませんが、それらはごくわずかの枚数にとどまっています。メディアの方々にとってもウェブによる報告のほうが使いやすいと評価をいただいているところです。

 その他、ペットボトルの節約も行っています。従来、無料のペットボトルを用意していたものを、タンクボトルへと変更しました。2009年からは“エコ・コンテスト”を始めました。スイミングクラブごとに行った環境活動を応募してもらい、“ジャパンオープン”の開会式で表彰しています。第2回はエコスローガン、第3回はエコアクションというテーマで行いました。その他、エコ啓発のためのピンバッジ作製、エコバッグやマイ箸、マイボトルといったエコ製品の配布、環境バナーの掲出など、さまざまな取り組みを行っています。行政との協力で、東京・お台場でのオープンウォータースイミング大会も実施しました。この辺りはあまり水質が良くないため、普段は遊泳禁止なのですが、特別に許可をいただきました。水質を良くするためのさまざまな対策を講じていただいたおかげで、年々水がきれいになっています」

 以上の報告に対し、会場からは「公式の理事会などでも紙は削減されているのか」、「メディア向けにペーパーをまったく出していないのか」といった質問が投げかけられ、佐野会長は「ゼロではないが、両面印刷を施すなど、極力少なくなるよう努力している」と回答。最後に「環境活動は継続しなければ意味が無い。当たり前のことをあせらず地道に続けていくことが大切」と呼びかけ、発表を終えました。

 続いて、日本サッカー協会の玉利聡一氏による発表が行われました。以下は発言要旨。

「まずはサッカー界全般の取り組みについて紹介します。Jリーグの各クラブでは地域に密着した活動を行っています。その中で複数のクラブがエコに関するミッションステートメントを行っています。例えばガンバ大阪では、地元大学が行う環境ボランティアへの参加といった活動を熱心に行っています。また先ほどの発表で紹介されました清水エスパルスの取り組みもその一つです。特にクイズ形式で楽しく遊びながら環境の事を学べる“エコブック”の配布は非常に参考になります。この他、地域のサッカー協会などでも様々な取り組みが進んでいます。JFAとして、これらの取り組みに対し何かまとめて発信していれば、ある種ベスト・プラクティスなのかもしれませんが、そういったことはできておりません。JFAが『ビジョン2005年宣言』、Jリーグが『100年構想』という大きなベクトルを示す中で、加盟団体やクラブ、ファンの方々が意気に感じて活動するといった相乗効果の中で実現ができているところかと思います。

 次にJFAとしての取り組みです。JFAは“チーム-6%”の時代から、当時の小池大臣と川渕キャプテンでメディアの注目を集めるイベントを行うといった活動を行っています。国連グローバル・コンパクトに際しても、加入させていただきました。具体的な取り組みとして、文京区での清掃活動への参加、メディアリリースのシステム化などに取り組んでいます。後者に関しては、年間40万枚ほど紙の削減ができています。先ほどの質問にあった、理事会などの資料に関してはまだ着手できておりません。今後取り組んでいこうと意見が出始めたところです。その他、ガンバ大阪の新スタジアム建設という話が出ていますが、我々環境プロジェクトとしても、これに対して政策提言というか、地域への働きかけができるよう、調査活動を行っています。この他にも広報啓発活動、節電対策などを実施しています。

 我々の取り組みのキーワードは“スローダウン”と“アダプテーション”です。サッカーの場合、環境問題を感覚的に理解する場面は、暑熱対策ぐらいしかありません。そのため関係者の理解がなかなか得られない現状です。3Rや5Rにみられるように『しなければいけない』とネガティブに捉えられることが多い環境問題を、もっとポジティブに取り組もうという呼びかけです。先日、300人を集めた指導者資格の更新講習会において、プロジェクトリーダーの岡田武史理事が、サッカー界が環境問題に取り組む意義を含め、指導者の社会的な役割について話をされました。サッカー指導者はD級だけで3万人いますので、そういったところでしっかりと伝えることができれば、大きな財産になるだろうと考えています」

 お二人の発表に対し、会場からは「こういった素晴らしい取り組みを競技団体間で共有したい。各団体のウェブサイトへ掲載し、関係者がアクセスできるようにできないか」との提言が行われました。

■第二部
◎スポーツと環境保全・啓発活動について

 休憩を挟んだ第二部では、IOCスポーツと環境委員を務める水野正人JOC副会長が登壇。自身の環境活動へのかかわりから話を始めました。
「1990年、スポーツ業界の世界会議で環境委員会を作り、私が委員長に就任しました。その話をIOCでしたところ、当時のサマランチ会長も『オリンピック運動は、スポーツ、文化、環境の3本の柱から成っている』と言い、1995年にスポーツと環境委員会が編成されました。私はその当時からずっと委員を務めています。JOCにスポーツ環境委員会ができたのは2001年です。八木祐四郎会長に訴えたところ『我々も環境活動に取り組まなければならない』と設置されることになり、私が委員長に就任しました」

 そして、これまでの日本における様々な環境活動について「IOCスポーツと環境委員会のパル・シュミット委員長からは、常々『JOCは世界の中で模範的な環境保全の活動を行っている』と評価されています」と紹介。ただ、この評価は各競技団体の熱心な取り組みによるもの、と続けました。
「NOCでやろうと言っても、NOCがスポーツの現場を持っているわけではありません。スポーツの現場を持って、そのスポーツの普及振興から世界の選手権に選手たちを送るという仕事を担っているのは、各競技団体です。スポーツの現場を持っているNFの方々と連携・協力しなければ、環境保全は実現しないのです。その意味で、私たちJOCとしても、日頃から環境保全に対していろいろご協力をいただいているNFの皆様に心から感謝を申し上げます」。
 水野副会長は、IOCスポーツと環境賞を受賞した水泳連盟を称える一方、陸上競技やサッカーをはじめ、さまざまなNFにおいても、環境保全に向けた活動が行われているとアピールし、参加した各NF担当者からの現状報告を求めました。

 最初に呼びかけられた財団法人全日本スキー連盟・宮沢賢一氏は、「私たちは、“I LOVE SNOW”キャンペーンという形で環境に関する啓発活動を行っています。スキー人口が減ってきている中で、このキャンペーンを通して雪と触れ合うことによってスキーの楽しさや環境の大切さを皆様に広めていきたいと考えています。そのキャンペーンの一環としてカーボンオフセットに注目しており、オフィシャルグッズ販売の代金をカーボンオフセットへ振り向けるという展開をしています」と現状を説明しました。
 公益財団法人日本バレーボール協会の取り組みについて、水野副会長は「日本で不要になったボールやネットを海外へ寄付したり、リサイクルグッズの売り上げを社会貢献財団へ寄付するなど、3R活動を積極的に展開います」と紹介。続けて指名を受けた財団法人日本ラグビーフットボール協会の高野敬一郎氏は、「ラグビーの精神“FOR ALL”を取り入れた“FOR ALL FOR EARTH”というキャッチフレーズの下、ゴミの分別やエコキャップ活動を展開しています。またそこで得た利益を恵まれない地域の子どもたちへのワクチンに利用してもらおうと、社会貢献へもつなげています」と現状の成果をアピールしました。

 公益財団法人日本馬術競技連盟の佐藤親悦氏は、「唯一、動物を扱う競技として、餌や厩舎に用いる飼料や稲藁等の管理には気をつけています。また競技会などでの環境保護の啓発活動はもちろん行っています」と説明。公益財団法人日本ゴルフ協会の取り組みに関しては、水野副会長が「昔に比べて農薬の使用は減っているし、林よりもゴルフ場のほうが炭酸同化作用が大きいという研究成果も出ています。また、競技大会でのゴミの分別活動も熱心に行っておられます」と紹介しました。
 財団法人日本レスリング協会の鎌賀秀夫氏は、「ゴミの分別活動をメインに、エコバッグの作製や啓発活動を行っています」と紹介しながら、「ペーパーレスにも取り組みたいが、レスリングの競技会場には大きな電光掲示板がないため難しい面もある」と課題を挙げました。

 社団法人日本ボート協会の小野寺等氏は、企業の力を借りて環境保全と普及を兼ねた活動の展開例を紹介。「現在様々な企業がエコキャップ活動を行っています。そういった企業へ全日本大会での回収を呼び掛けたところ、社内ボランティア団体の方々に参加して協力していただきました。その活動が社内のイントラネットで広報されることで、ボート競技の普及にもつながると考えています」と話しました。
 公益社団法人日本トライアスロン連合の中山正夫氏は、「トライアスロンは、環境とともに進化・発展した競技。環境問題が叫ばれるより以前から、海のゴミ拾いや浜辺の清掃などを行ってきました。大小含め全国250ほどの大会において、ほぼ同じレベルで環境保全活動が展開されています」と述べました。

 これらの発表を受け、水野副会長はあらためて謝意を表すとともに、「私たちが今後取り組むべきは、“啓発”と“実践”。まずはNFが示すことで、都道府県や地方の町へと裾野が広がっていくのです。環境というテーマは地味で脚光を浴びるものではありませんが、それでも我々はやり続けなければいけない。今ならまだ間に合います。持続可能な社会を築くために、皆で力を合わせて取り組みましょう」と呼びかけ、講演を終えました。

 閉会にあたり、水野副会長は「本日ここに集まった私たちには『環境のことを忘れることなく皆に刺激を与え続ける』というミッションがあります。このセッションだけで終わらず、それぞれのNFにおいてぜひ役立てていただきたいと思います」と挨拶し、会議を締めくくりました。

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