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2006.09.18 その他活動

第2回JOCスポーツと環境・地域セミナーを開催

第2回JOCスポーツと環境・地域セミナーを開催
基調講演は荻原健司氏(写真右)と荻原次晴氏(同左)が雪山やスキー競技の将来について語った。

去る9月18日、第2回JOCスポーツと環境地域セミナーが長野県県民文化会館小ホールで行われ、約200名が参加した。主催者として竹田恆和JOC会長は「スポーツと環境は密接な関係があると思います。また相互に協調していかなくてはいけないもの」と挨拶。長野市の鷲澤正一市長も長野市が積極的に環境保全に取り組んでいることをアピールした。

第1部 スポーツと環境保全とのかかわり

セミナーのトップバッターで登場したのはJOC評議委員・アスリート専門委員・女性スポーツ専門委員の荻原健司氏とJOCオリンピックデーラン・アンバサダーの荻原次晴氏。両氏はノルディック複合競技選手として長年、冬季競技にかかわってきた経験から、深刻な雪不足について触れた。

健司氏は世界レベルで雪不足の深刻化を指摘。「昔は暑さから逃れるため、ヨーロッパの3000m級の山の氷河を使って、クロスカントリーの練習に出かけていったが、面積が毎年、小さくなっており、雪も汚くなっている」

一方、次晴氏からはこんな衝撃的なエピソードも紹介された。「'95年にカナダで行われた世界選手権の競技場の隣にはパルプ工場があり、そのエリアの空気が非常に汚れていた。滑るとスキー板の滑走面が重油をつけたみたいな真っ黒の汚れがついていた」

また健司氏はこの先、温暖化が進むといずれ地球から雪がなくなり、スキー競技自体がなくなってしまうのではないかと警鐘を鳴らし、「スポーツを愛する若い世代も環境保全についてもきちんと考えなくてはいけない」と語った。

具体的な取り組みについて次晴氏は、
「僕は家庭でもごみを何種類も分けているし、荻原家はかなり倹約家で、悪く言うとかなりケチ。だから無駄なものは買わない」と語り、会場の賛同を得ていた。またある日本代表のスノーボードの選手が環境保全のためエアコンを一切使わないといった話を披露した。

日本バレーボール協会女子強化委員でJOC環境アンバサダーの大林素子氏は、取材などを通し現在のバレーボールで行われている環境保全について次のように語った。 「私たちの時代は自由に冷房を使えていたが、今はそれが一切ダメ。試合以外は冷暖房を使わずにいる。またバレーボール会場でよく見かけるスティックバルーンも以前は使い捨てだったものが、最近はストローで空気を出し入れできるようになり、持ち運びも可能になったのでごみも減った」

JOCスポーツ環境専門委員会の水野正人委員長はスライドを使ってスポーツと環境のかかわり、活動の経緯について説明。ごみ分別など各競技団体の現場での取り組みについても写真とともに紹介。
具体的な活動の提案として、無駄な電気や紙の削減、同じものをできるだけ多い回数使う工夫をすること、使えなくなったものはうまくリサイクルし、他物資にして使用することなどをあげた。加えて水野委員長は環境保全活動を持続していくに当たり「環境保全はエンドレスな仕事。だから最初から張り切りすぎず、自分のペースで忍耐力や継続力を持って、進めていくことが大事です」と会場にアドバイスを行った。
またスポーツ環境の啓発活動を推進するバナーやポスターをオフィスなどに掲示するよう各競技団体の関係者に求めた。

長野市の環境保全の取り組みとして、長野市環境管理課鈴木克幸氏がESCO事業を説明。ESCO事業は地球温暖化対策のひとつで、ESCO事業者は建物やビル、工場などがどのようにすれば省エネルギー効果が見られるか計測・設計、施工し、さらには省エネに関する包括的なサービスを提供する。長野市がESCO事業を導入するのは今年度がはじめてで、テニスコートや陸上競技場、温水プールなどがある長野運動公園総合運動場総合的で光熱費など消費エネルギーを抑え、二酸化炭素の排出を減らすことを目的としている。

第2回JOCスポーツと環境・地域セミナーを開催
JOC環境アンバサダーを務めた大林素子さん。室内競技での現状などをフレンドリーな語り口で伝えてくれた。
第2回JOCスポーツと環境・地域セミナーを開催
JOCスポーツ環境委員会の水野正人委員長。

第2部 冬季競技の環境保全の啓発・実践活動について

国際スキー連盟技術代表の丸山仁也氏は、スキーは自然とのかかわりが強いスポーツだと強調。その中で雪面硬化剤使用についても慎重に協議していることを示した。

「自然の雪の状態ではどうしてもやわらかく、競技をしていくうちに斜面が荒れてしまう。そういったことを防ぐために水や雪面硬化剤を使うが、開催地の住民としては草の育成に害を及ぼすようなものは使用して欲しくない。そこで全国の大会代表者に集まってもらい、どういうタイミングでまけば、少ない量で効果的に使うことができるかなどを各地の情報を交換しながら、議論し、できるだけ自然へのプレッシャーを抑えるための努力をここ数年、続けてきた」

日本スケート連盟はスピードスケート強化スタッフの黒岩敏幸氏が登壇。

「大会でも電力消費量や印刷物の削減、競技役員が大会中使用する紙コップなどは名前を書いて再利用することを促した。またごみの徹底分別により、新しい資源を生み出す手助けをした」と3R(リデュース、リユース、リサイクル)の推進活動を具体的に示した。

バイアスロンからは日本近代五種バイアスロン連合理事で長野県バイアスロン連盟会長の百瀬公基氏が取り組みについて説明。ライフルで使用する弾(鉛)の全弾回収について触れ「メタルターゲットを使用すると弾がほうきとちりとりで回収ができる。とはいえ日本では4箇所しか競技場がないため、その中ではメタルターゲットを使えず、紙やガラスのターゲットを使っているところもある。ただしその対策として、標的の下の部分をコンクリートにして後ろをプラスチックかコンクリートの枠を組んで、その中にある粘土のようなものに対して打ち込み、後で回収する装置を連盟では考えている」と語った。

アイスホッケーの保全・実践活動は、会場内のごみ分別、回収、コピー用紙の再利用、マイカップの持参、省エネ対策として暖房器具の低めの設定、マイカー利用の抑制を推進。日本アイスホッケー連盟理事の中村慎氏は「最近のスティックはブレードの部分だけが取り替えられるようになり、シャフトは何度も使える。これも環境保全対策としては意義のあることではないか」と話した。

ボブスレー・リュージュは日本ボブスレー・リュージュ連盟総務・財務委員長の藤牧博和氏が長野市にある競技施設『スパイラル』で以下のような活動を推進していると報告。

「6年前から『夏フェスタインスパイラル』という名称で事業を行っているが、そこで環境保全実践活動を行っている。ここでは連盟の選手や役員、『スパイラル』のある地元長野市浅川地区の住民で作られた浅川スパイラル友の会、選手の関係者で構成されるリュージュ振興会、浅川小学校の子供たちなどが集まり、草刈やごみ拾いを行っている」このようなイベントは子供たちの環境保全に対する意識を高め、啓発活動としておおいに役立っているという。

カーリングは製氷に電気やバッテリーを使い、二酸化炭素の排出がほとんどないものを使用。日本カーリング協会理事・強化委員長の長岡秀秋氏は「氷も直接、環境に影響はなくとも水道水をイオン交換して使用。またごみの分別収集の徹底も行っている」と報告した。

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