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2021.11.08 オリンピック

【東京2020オリンピックメダリストインタビュー】北園丈琉:他愛もないことを含めて、オリンピックというだけで全てが楽しかった

 JOCが年1回発行している広報誌「OLYMPIAN」では、東京2020オリンピックでメダルを獲得した各アスリートにインタビューを実施しました。ここでは誌面に掲載しきれなかったアスリートの思いを詳しくお伝えします。

北園 丈琉(体操/体操競技)
男子団体 銀メダル

【東京2020オリンピックメダリストインタビュー】北園丈琉:他愛もないことを含めて、オリンピックというだけで全てが楽しかった
体操男子団体で銀メダルを獲得した北園丈琉選手(写真:フォート・キシモト)

■1年の延期をチャンスに変えて

――体操競技は第1回のアテネ大会から実施されている歴史のある競技です。男子団体として2004年のアテネ大会から5大会連続のメダル獲得について、今のお気持ちをお聞かせいただけますか。

 そうですね。目標はこの東京2020オリンピックで金メダルを獲得することにありました。まず代表入りを果たして、出場できたことにほっとしていたのですが、金メダルをとらないとこれほど悔しいということにあらためて気づきました。本当に良い経験になったと思います。

――北園選手は3歳から体操を始めて小学4年生で全国大会に出場するようになりました。東京2020オリンピック開催が決まったのは小学2年生の時でしたでしょうか。その時からこの大会を目指し、そして金メダルを目指すと常々公言されてきたと思います。1年延期されましたが、実際に大会が開催され、そして参加して、今どのようなお気持ちですか。

 目標は高校3年生でオリンピック出場だったのですが、それが新型コロナウイルス感染症拡大の影響で延期になりました。でも、その1年延期によって自分は練習を積むことができて伸びたので、この1年の延期をチャンスに変えることができましたし、オリンピック出場にもつなげられたのかなと思います。

――「悔しい」というコメントが多く聞かれましたが、東京2020オリンピックを楽しむことはできましたか。

 はい。すごく楽しかったです。選手村から本当にワクワクしていました。ご飯を食べるのも楽しかったですし、他愛もないことを含めて、オリンピックというだけで全てが楽しかったです。

――大会期間中、種目別の前に橋本選手を誘って美容室に行かれたと聞きました。どんなお気持ちで誘ったのでしょうか。

 みんなと一緒に行きたかったので誘いました(笑)。

■清々しい気持ちになるのがスポーツの魅力

――団体戦では、いわゆるノーミスで18種目全てクリアして、それでもROC(ロシアオリンピック委員会)と0.103点というわずかな差で銀メダルになりました。2019年世界選手権でのロシア、中国との差を考えると、本当にすごくいい試合だったと思うのですが、振り返ってみてどのように思われていますか。

 世界選手権を見ても、中国、ロシアは日本の上をいっているなと見ていて感じていたので、僕がメンバーに入って必ずひっくり返したいという思いがずっとありました。この大会も金メダルを目標に頑張っていたのですが、本当に0.1ポイントだけROCに勝てませんでした。この0.1はパリオリンピックに向けての大事な0.1かなと思います。

――4月の全日本選手権で両ひじの靱帯をケガされました。まだ完治されていないと思うのですが、そうしたコンディションのなかで、チーム最年少の18歳として、ゆか、あん馬、跳馬、平行棒、鉄棒と5種目に出場されました。自分の演技で良かった点や課題を教えていただけますか。

 ゆかはトップバッターを務めて、本当に良い流れを作れたと思いますし、平行棒も着地をしっかり止める演技ができたのは良かったと思います。ただ、あん馬はDスコアが予定より下がったり、跳馬もラインオーバーしてしまったり、いろいろ課題がありました。任された種目で自分の力を出し切ることが大事だと感じました。

――2018年のユースオリンピックでは金メダル5個という大活躍でした。今回の東京2020オリンピックとどのような違いを感じましたか。

 ユースオリンピックでは、東京2020オリンピックに向けて、すごくいろいろな経験を積めました。その経験があったからこの大会でこの結果を出せたと思うのですが、ただオリンピックという舞台は甘くないというのをあらためて痛感しました。オリンピックでの金メダルは、ユースオリンピックの金メダルとは全然違うものですし、これからも僕の目標であり続けます。もっともっと頑張って3年後は必ず金メダルを獲得したいと思います。

――オリンピックで戦うプレッシャーは他の大会と違うものはありましたか。

 準備はいつもの試合と変わらないのですが、でもオリンピックというだけですごく緊張感があったり、気持ちの面ですごくテンションが上がったりするところがあって、やはり特別な舞台でしたね。

――団体戦で最後にROCをたたえた場面など、スポーツの良さを感じました。北園選手にとってオリンピックの価値や素晴らしさをどのように感じていらっしゃいますか。

 見ていて清々しい気持ちになるのがスポーツの良いところだと思いますし、僕たちは負けましたが、ROCの選手も本当に素晴らしかったと思います。お互い高め合っていくことが大事かなと思います。

【東京2020オリンピックメダリストインタビュー】北園丈琉:他愛もないことを含めて、オリンピックというだけで全てが楽しかった
「金メダルは僕の目標であり続ける」と話した北園選手はパリオリンピックでのさらなる飛躍を誓った(写真:フォート・キシモト)

■攻める演技を心がける

――今回、無観客で開催された大会ですが、演技に集中するために何か対策や準備をされましたか。

 無観客でしたが、やるべきことは何も変わらなかったです。自分自身に集中できたことは良い経験になったと思います。

――種目別鉄棒では2度の落下もありましたが、それでも3カ月前の全日本選手権で失敗したトカチェフに今回チャレンジされました。見ている私たちは勇気をもらいましたが、どのような気持ちで最後のトカチェフをチャレンジされたのでしょうか。

 怖さはありました。でも、オリンピックという舞台で悔いは絶対に残したくなかったので、守るのではなく、攻める演技を心がけました。これから前を向くためにも大事な鉄棒でしたね。

――以前、北園選手が憧れの選手を見て体操選手になったように、北園選手を見て、体操をやってみたいと思う子どもたちに多いと思います。ぜひ、アドバイスをいただけますか。

 僕も内村航平選手を見て、体操を真剣に始めました。僕が大事にしてきたのは、目標を明確にもって毎日練習するということ。東京2020オリンピック開催が決まった時から、「絶対に優勝する」という目標を掲げてやってきました。そして、思い続けていれば、必ずその目標がかなう方向に進みます。本当に小さなものでいいので、目標を立てて頑張ってほしいと思います。

――今後はどのようにステップアップしていきたいですか。

 基本的にやるべきことは変わりません。目の前のことを一つひとつクリアしていけば、その先に結果がついてくると思います。まず今、目の前にある課題に集中して取り組みたいと思います。

――3年後にはパリオリンピックがあります。どのような姿を皆さんに見せたいと思いますか。

 やはり、金メダルをとりたいです。その目標を必ず達成したいと思いますし、そのことで支えてもらった多くの方々に自分の演技で恩返ししたいというのもあります。今回はかないませんでしたが、次こそは必ず演技で恩返ししたいなと思います。

(取材日:2021年8月4日)

■プロフィール
北園 丈琉(きたぞの・たける)
2002年10月21日生まれ。大阪府出身。3歳から体操競技を始める。18年ユースオリンピックでは個人総合、種目別ゆか、つり輪、平行棒、鉄棒の計5種目で金メダルを獲得。20年全日本個人総合選手権では個人総合で2位。21年4月の全日本個人総合選手権では鉄棒で落下し、両ひじを負傷。代表入りは絶望的と思われる大ケガだったが、1カ月で復帰。6月の全日本種目別選手権では、完璧な演技で見事代表入りを果たした。東京2020オリンピックでは個人総合で5位入賞、男子団体で銀メダルを獲得。徳洲会体操クラブ/清風学園所属。

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