JOCが年1回発行している広報誌「OLYMPIAN」では、北京2022冬季オリンピックでメダルを獲得した各アスリートにインタビューを実施しました。ここでは誌面に掲載しきれなかったアスリートの思いを詳しくお伝えします。
髙木 美帆(スケート/スピードスケート)
佐藤 綾乃(スケート/スピードスケート)
髙木 菜那(スケート/スピードスケート)
女子チームパシュート 銀メダル
■皆さんに救われたオリンピック
――銀メダル獲得、本当におめでとうございます。皆さん、実際のところは悔しさもあるとは思うのですが……、まずは菜那選手から、率直な感想をいただけますでしょうか。
髙木菜那 平昌オリンピックの時の金メダルとは違って、すごく悔しい思いの銀メダルとなりました。ただ、それとともにチームや仲間の大切さ、応援してくださる方々の言葉や励ましのエールなど、すごく温かい言葉をたくさんいただき、くじけずにまた前を向くことができました。応援してくださる皆さんの温かさがあらためて身に染みたオリンピックであり、銀メダルだったと思います。
――私たちも「おめでとうございます」と本当に心から思っています。
髙木菜那 ありがとうございます(笑)。
――こちらこそ、ありがとうございます。佐藤選手、そして、美帆選手はいかがですか。
佐藤 いろいろな思いが詰まった銀メダルです。チーム力はもちろん、他国の選手たちにはできないような私たちの強みや戦術を世界中の方々に届けることができました。もちろんたくさんの方々のサポートがあったからこそ実現した銀メダルだと感じています。
髙木美帆 転倒してしまい最後までゴールできなかった悔しさを、当初はすごく感じていました。金メダルの最有力候補だと言われていながら、その金メダルをゴールまであとほんの少しというところで逃してしまったことで、責任感や悔しい気持ちをすごく感じていたんです。ただ、レースから少し時間が経って、あらためて落ち着いて考えてみると、日本で応援してくださる方々や、かつてのチームメートなども含めて応援していただいていた多くの方々から、SNS上などで「感動した」とか「笑って」といった私たちを励ましてくださる言葉をたくさんいただくことができて、少し気持ちが救われました。2番だったけど何か届けることはできたのかなという思いになれました。本当に皆さんに助けられたと感じています。
■努力を積み重ねてきた3人の力の結晶
――周りで喜んでくださる皆さんをはじめ、世の中の反響なども含めて、どのように感じていますか。
佐藤 個人種目でのメダル獲得も目標にしていたのですが、それは残念ながらかないませんでした。ただ、チームパシュートでこうしてメダルをとることができたことは、本当に率直にうれしい気持ちです。オリンピックメダリストは、簡単になれるものではありません。銀メダルという結果に対して悔しい思いはあるのですが、これまでの努力が報われた瞬間ですし、やはりうれしい思いが強いです。チームパシュートは、これまでオリンピックで結果を残し続けてきた種目でもあったため、勝ち続ける大変さを感じていました。また一方で、今季はオリンピック前に一度も優勝することができず追う立場でもありました。いろいろと経験した末に銀メダルを獲得できたので、「努力することは絶対に間違いではない」ということを私たちが証明できたと感じます。
――菜那選手は、昨日のマススタートでも最終コーナーで転倒があったように、今大会はつらい思いをすることが多かったようにも感じます。この北京2022冬季オリンピックをどのように振り返りますか。
髙木菜那 最後まで滑り切れない、最後まで力を出し切れない、というところは、本当に悔しい思いがありました。特に、みんなで一緒に戦えたチームパシュートで、4年間努力を積み重ねてきたにもかかわらず、最後の最後で転んでしまい、自分たちの力を全て見せられなかったことは本当に悔しいです。ただ、そこまでの滑りはすごくいい滑りができていたと思うので、そういうところは誇りに思います。先ほど妹も言いましたが、今回、皆さんの言葉で本当に心が救われたと感じたので、そういう人たちに「ありがとう」と早く伝えたいと思っています。すごくつらい思いをしたオリンピックでしたが、応援してくださる人たちの言葉のパワーは本当にすごいと思えたオリンピックになりました。
――ありがとうございます。話しづらいことを伺ってしまい申し訳ありません。前向きなメッセージで私たちも少し救われます。チームパシュートは、個人種目以上にTEAM JAPANとして戦う特別な意識を感じるものでしょうか。
髙木美帆 レースに懸ける思いは、個人種目とはまた違う部分もあります。団体種目だからこそ、自分のミスがチーム全体のミスになってしまうというプレッシャーがあり、緊張感や不安も個人種目とはまた違った形で感じることが多いですよね。逆に、個人種目以上に「仲間のために力を発揮しよう」と思えるのは、チームパシュートならではと感じています。
――ありがとうございます。皆さん、本当におめでとうございました。
全員 ありがとうございます。
■プロフィール
髙木 美帆(たかぎ・みほ)
1994年5月22日生まれ。北海道出身。
5歳でスケートを始める。小学2年でサッカーを始め、中学時代は北海道選抜メンバーとしても活躍。2010年バンクーバーオリンピックでは、日本スピードスケート史上最年少となる15歳で日本代表選手団に選出された。18年平昌オリンピックでは女子1,500m で銀、女子1,000mで銅、女子チームパシュートで金メダルを獲得。19年には女子1,500m世界記録も樹立。北京2022冬季オリンピックでは女子1,000mで金メダル、女子1,500m、女子500m、女子チームパシュートで銀メダルと4個のメダルを獲得した。日本体育大学所属。
佐藤 綾乃(さとう・あやの)
1996年12月10日生まれ。北海道出身。
小学1年生からスケートを始める。中学・高校と1,500m、3,000mで活躍。2017年に日本代表としてアジア大会に出場。女子3000mで銅メダル、女子マススタートでは銀メダル、女子チームパシュートでは髙木菜那らと組んで金メダルを手にした。17-18シーズンのワールドカップシリーズでは髙木菜那、髙木美帆と組んだ女子チームパシュートで世界記録を更新。18年平昌オリンピックでは女子チームパシュートで金メダルを獲得し、日本女子史上最年少金メダリストとなった。北京2022冬季オリンピックでは女子チームパシュートで銀メダルを手にした。全日本空輸(株)所属。
髙木 菜那(たかぎ・なな)
1992年7月2日生まれ。北海道出身。
兄の影響でスケートをはじめ、小学校入学後にスケートクラブに入部。2014年ソチオリンピックでオリンピックに初出場し、女子チームパシュートでは4位入賞に貢献した。18年の平昌オリンピックでは、髙木姉妹にとって初の姉妹そろってのオリンピック出場となる。女子チームパシュートで金メダルを獲得し、新種目、女子マススタートでは初代女王に輝いた。オリンピックの1大会で金メダル2つ獲得は夏季・冬季通じて日本女子史上初の快挙となった。北京2022冬季オリンピックでは女子チームパシュートで銀メダル獲得に貢献。同年4月に引退を表明。日本電産サンキョー(株)所属。
(取材日:2022年2月20日)
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