トリノ2006
スペシャルコラム
吹けよ追い風
川崎努さん
2月19日の午前中からトリノに降り出した雨も昼過ぎには雪へと変わり、辺り一面は真っ白に雪化粧。毎晩行われるメダルプラザでのメダル授与式では、雪が降る中にもかかわらず多くの観客が会場に足を運び、雪だるまのようになりながらメダリストに拍手喝采を送っていた姿が嬉しかった。
競技会場に向かう道端には「I Need Ticket」のボードを持った人が増え、チケットハウスには絶えず行列ができている。競技会場内で当初目に付いた空席も、今ではすっかり見当たらない。各国の国旗やお手製のメッセージボードなどが大きく振られ、声援も大きく賑やかだ。トリノ冬季オリンピックのマスコットである「ネーベ」と「グリッツ」も雰囲気の盛り上げに大活躍している。
写真提供:フォート・キシモト
観客の多くは、競技の間にウェーブをしたり、会場内に流れる曲にあわせて踊ってみたりとスポーツ観戦の楽しみ方を心得ている。楽しみながらも、まるで自分が競技を行なっているかのように真剣に応援し、一喜一憂するその姿はとても印象的だ。
「あと少し、惜しい」のフレーズがおなじみとなってしまったが、まさにその通り。
日本代表の各選手とも全力を出し切り頑張っているのだが、なにしろ「追い風」が吹かないのだ。
思わず「あーっ!」という声が漏れてしまう結果が続いているが、選手の健闘は称えられるべきだろう。むしろ、日本の選手だけを見れば会心の戦いぶりなのかもしれない。
写真提供:アフロスポーツ
気になるお隣の国、韓国のメダル獲得数(23日15時現在)はスウェーデン、イタリアの10個に次ぐ8個で、全体の10番目。体格の変わらない日本との違いは、スポーツ選手の社会的地位の確立や優遇措置、設備や環境の差にあるのかもしれない。韓国のナショナルチームには、専用のスケート場や学校、寮などをひとつにしたトレーニングセンターがあり、時間の無駄なくトレーニングに没頭できる環境があるようだ。日本の選手たちも懸命に努力してこの大会に臨んでいるが、ショートトラックの選手の場合、仕事や学校が終わった夜間に練習し、スケート場が遠い選手の場合は、練習時間よりも長い時間を移動に費やしているケースもあるのが現状なのだ。
大会は終盤戦に差し掛かり、そろそろ競技を終了した選手も出てきている。 そうした選手の健闘を称え、感謝と労いの言葉を贈るとともに、チームジャパンとして全員で残りの種目をしっかりと戦い抜いて欲しいと思う。
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