2010/11/28
新体操 山口7位、大貫8位 26点台の必要性を痛感
文・折山淑美
25日に競技が開始された新体操。初日の個人総合予選を兼ねて行われた団体総合で日本は、大貫友梨亜選手と山口留奈選手が4種目、穴久保璃子選手が3種目、小西夏生選手はフープだけの出場。総合得点ではカザフスタンとウズベキスタンに次ぐ3位入賞を果たした。
だが個人総合予選として見れば、大貫選手の5位が最高で、山口選手は7位。2人の決勝進出となったが、4種目とも28点台の高得点をずらりと並べたアンナ・アリャビエワ選手(カザフスタン)は別格としても、4位までの選手が各種目で26点以上の得点を獲得するレベルの高い争いになった。大貫選手はボールとリボンで26点台を出したが、山口選手はボールの25.8000点が最高。個人総合でのメダル獲得はかなり難しいと思われる結果になったのだ。
26日に行われた個人総合決勝の第1グループ。日本勢は苦しいスタートを切った。最初にロープで登場した山口選手は、堅実な演技をしながらも、ラストで投げたロープをキャッチできずに落とし、25.400点のスタート。演技後は表情を曇らせた。しかし2種目目のフープでは、ロープでの失敗を吹き飛ばしたような、はつらつとしたキレある演技を見せた。得点は予選を大きく上回る25.850点。それで気持ちも乗ると、大きなミスもせずにボールでは25.850点を、最後のリボンでは26.100点をマークした。
18歳の山口選手は、今年9月の世界選手権にも初出場したばかり。「ロープで失敗したけれど、そこから気持ちを切り換えて建て直せたのは良かったと思います。外国選手はダイナミックな動きをしているし、上位選手はピボットの回転数も多い。簡単にはそのレベルに行かないとは思うけど、可能性を信じて真剣に取り組んでいきたいと思います」と、2大会続いた貴重な経験で、より高い意欲を持つようになった。
一方、大貫選手も1種目目のフープで、途中でフープをつかみ損ねて何とかキャッチするミスを犯す。そしてその後のピボットターン中には、持ちかえようとしたフープをつかめずに大きく飛ばしてしまった。得点は第1グループ20人中10位の25.000点に。それでも切り替え、次のロープでは一度持ち直す小さなミスを犯しながらも予選より高い25.800点を獲得。続くリボンでは全体の4位になる26.250点を、最後のボールでも26.100点を獲得して演技を終えた。「最初の種目のフープで失敗したけど、自分の課題として演技の後半がだんだん弱くなってしまうところがあります。それを克服できずに、もう一歩の踏ん張りが足りなくてミスをしてしまったのは悔しいです。でもそれを何とか次の演技までに建て直すことができて……。4種目通してミスなくやることが大事ですけれど、今回は最初の失敗から最後には建て直すことができたのは良かったと思います」と話す。
大貫選手は、9月の世界選手権を終えてからは、見ている人の印象に残り、人を引きつける魅力のある選手になることを課題にして取り組んでいるという。その意味ではまだ途中の段階だ。次のチャンスまでには、自分の存在感を引き出した誰にも出来ないような作品を作り、もっと成長した魅力のある演技を見せたいという。「順位や得点より、自分の演技をパーフェクトにやり切りたいという気持ちで試合に臨みました。それをやり切った時に、得点も順位も付いてくると思っていますから。それを出来なかった種目があったのは残念だけど、課題も見えてきたのでとてもいい経験をさせてもらえたと思います」。
結局、山口選手は予選と同じ7位、最初で大きく出遅れた大貫選手は8位という結果に終わった。アジアでは旧ソ連の流れを引き継ぐカザフスタンやウズベキスタンなどは以前から強いが、今回は韓国の16歳、孫延在選手が3種目で27点台、残りの1種目も26.900の高得点を出して3位になった。
日本体操協会は今年、世界で10位以内に入るための第一歩として、世界新体操選手権と広州アジア大会の代表選考会として、4回の試合を行うコントロールシリーズを新設。26点台を出した選手を優先的に代表に選ぶという方針を取った。ただ自分が満足するノーミスの演技ではなく、世界と戦うためには26点台は最低限必要な点数で、そのためには得点レベルを上げなければならない現実があるからだ。
その戦いを経験した大貫選手はこう言う。「点数ばかりに捕らわれたくないという気持ちはあるし、26点を出さなければ世界選手権へいけないということで苦しい気持ちにもなりました。でもそのなかで、点数を狙いながらも自分のやりたいことや技に挑戦する気持ちも持てたので…。その意味ではコントロールシリーズで鍛えられたのかな、という気もします」
今回のアジア大会でも、得点力アップの必要性ははっきりした。自分の表力現を磨くこととともに、どうすれば高得点を上げられるかも考えること。それが選手達にとっては、これからの大きな課題となる。