『未来のオリンピアン』
120%の力を出し切り、世界で通用する選手になる!
大塩 勇斗/清水 彰人(ライフル射撃)
親元を離れてのアカデミー生活
清水 ありました。実家にいるときは父や母に頼って生活していたので、すべてを自分でしなければいけないことが不安でした。地元には、小学校から一緒だった友達もいましたし、中学3年で転校することに寂しさもありました。受験生ということもあり、勉強時間を確保できるか心配でしたから、最初は母も反対したんです。でも、自分が頑張るからと言って許してもらいました。
大塩 父からも母からも「行くか行かないかは自分で決めなさい」と言われました。一番力を出し切れるのは、エリートアカデミーに入ることだと思ったので、自分でここに来ることを決めました。
清水 アカデミーでの生活には慣れましたが、学校生活がまだ慣れなくて……(笑)。中学3年になるまで別の学校に通っていたので、まだうまくなじめていないです。
大塩 地元の福井にいたときと同じ生活ができるか、はじめは不安や心配もありました。でも、月日が経っていくうちに、だんだん慣れてきました。でも、朝早く起きることや洗濯など、生活面での決まり事にまだ慣れていない面もあります(笑)。
清水 電車の乗り換えがわからなくて、羽田空港から味の素ナショナルトレーニングセンター(味の素トレセン)に来るまでで精一杯でした。路線があちこちに分かれていて、「どの電車に乗るとどこに行ってしまうのだろう」と心配になりました(笑)。
大塩 住んでいたのが、福井でも田舎の方でしたので、交通手段もバスくらいしかありませんでした。東京に来たら、交通手段は多いし、大きな建物がたくさんあってとにかくびっくりしました(笑)。
東京オリンピックで輝くため 技術・メンタルを高める
清水 海外の試合に行って感じたことですが、体の大きさや技術面など、世界のトップ選手はレベルが高いと感じました。僕はまだ体も小さいですし、気持ちも強くないので、そのあたりをもっと高めていきたいと思います。
大塩 僕もレベルの差を感じています。味の素トレセンの射撃場にもよく日本のトップ選手がいらっしゃいますが、みなさんすごくリラックスして打っています。僕は緊張した状態で打っていたので、気持ちを落ち着かせて力を抜いて打つことが必要だと学びました。
清水 トリガー(引き金)を引くときは思い切り引くのではなく、徐々に圧力をかけていきます。銃がブレないように静かにトリガーを引くことや、腕の力を抜いた状態で打つことが重要です。
大塩 射撃にとってもっとも大切な技術は「メンタル」だと思っています。気持ちを高めないと点数も上がっていかないですし、逆に気持ちが低いままだと点数にそのまま表れます。
清水 普段はあまり集中が長続きしなくて、途中で「今日の晩ご飯は何だろう」といったことを考えてしまうことがあります。でも、試合中はそういったことを一切考えず、的に向かって打つことだけに集中する。それができているのが、いちばんいい時ですね。
大塩 一発一発照準を合わせている時がいちばん集中できていると思います。
清水 勇斗はたまに約束事を破るので、ケンカになることがあります。そこは直してほしいですね(笑)。でも、僕よりも集中力が高いことや、誰とでも友達になれる性格はうらやましいです。
大塩 試合や練習でも、大事な場面でいい点数が出るところがすごいと思います。射撃は上位8人が決勝に残るんですけど、この前の試合でもはじめは下の方にいたのに、後半に高い点数を連発して、他の選手を抜いていったところなどは、見ていて憧れます。
清水 日本や海外でたくさん試合に出て、課題を見つけてレベルを上げていきたいと思っています。5、6年後には世界で通用するような選手になりたいです。
大塩 何においても120%の力を出し切ることだと思います。100%出そうと思っても、本番では緊張やいろいろな気持ちのせいで80%しか力が出せないことがある。本来の力を出し切るためにも、日々の練習や生活、何においても120%で取り組むことが必要だと思います。
大塩 僕の夢は、何歳になっても現役で続けられる選手になることです。
清水 徳島県出身者に山下敏和選手という有名な先輩がいらっしゃいます。夏休みに、技術面やメンタル面のことを教えていただいたのですが、それがとてもわかりやすくて、それまで気づかなかったことにも気づかせてくれました。いずれは僕も、そういうコーチや先生になれたらいいなと思っています。