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中根弓佳

インタビュー

Bリーグ 理事

中根弓佳さん

きっかけ・理由

前任者からの声がけとBリーグの魅力

Bリーグの理事になった経緯

2019年6月からBリーグの理事に就任しました。

現在務めるIT企業では、人事や組織改革を担当してきました。その経験を知っていた前任の女性から声をかけてもらいました。

ミニバスケットボールをやっている娘がいて、一緒にジェッツの試合を観に行くようになってから、Bリーグにも関心を持つようになりました。

理事を引き受けた3つの理由

まず、Bリーグの事業性と今後の将来性を感じたことと、Bリーグチェアマンの大河正明さんの「自分たちの組織を良いものにしたい、変えたい」という想いに動かされました。4シーズン目に入ったBリーグの事業はこれまで順調で、プロモーションも上手でした。しかし、少子化がさらに進むなか、Bリーグは「組織をどう強くしていくか」を考える第2ステージにあり、 まだ変えられるところ、アップデートしていけそうなところがあると思いました。

また、自分自身スポーツが大好きで、子育てとの関わりのなかで将来性のある事業だとも思いました。また、スポーツは人間性を育む良い機会だと思っています。

さらに、子育ても一段落し、自分自身のキャリアの転換期として、理事のお話をいただいたのはちょうど良いタイミングでした。仕事の内容と環境を考えて、新しいチャレンジができそうと思い、やらせていただくことにしました。

気づいたこと

外部理事にやさしいBリーグ理事会

理事に就任してから

就任して間もないので、まだいろいろ勉強しつつ、自分にどんな貢献ができるのかを探っているところです。

理事会は月に1回、議題がたくさんあっても2時間で終わります(外部理事に対するブリーフィングの時間があります)。ペーパーレスで会議の運営自体が非常に効率的です。

立場の似たような女性の先輩理事もいて、わからないことがあるといろいろ教えていただいています。

理事の方は皆、私がバスケットボールのことを知らないことをご存じで、情報を包み隠さず教えてくれます。今の会社でも、スキルの違いはあったとしても、情報共有を通じてチームワークを図ることを大事にしています。

大変・戸惑い

まだまだ勉強中!

理事になって戸惑ったこと、大変だったこと

今まで所属したことのない組織のなかで「私はそう思いません」という反対意見を、どのように伝えれば、気持ち良くその意見を受け入れてもらえるか、認識してもらえるかという点で、うまくできなかったと思い、落ち込んだ時期がありました。

今はまだ競技に対しても、組織に対しても圧倒的に勉強不足を感じています。試合を観に行くなど、自ら足を運んで自分で勉強していく努力が必要だと思っています。

克服

メンターや周りの人たちに聞いてみる

不安を払拭したもの:メンターの存在

バスケットボールのことは全然わかりませんでしたが、前任の女性理事から、Bリーグの成り立ちから組織運営のほか、その方がどのようにキャリアを築き、どのようなときに一歩踏み込もうとチャレンジしてきたのか、それから、「こういうことをしておくと、あとで必ず役に立つ」とか、いろいろと教えていただいて、理事になることに対しても、新しいことにチャレンジすることに対しても、ずいぶん勇気を持つことができました。

チェアマンからも「違う視点で意見をいえること」が私の1つのバリューだと背中を押され、自分にも貢献できることがあると思えたんです。

どう克服してきた/しているか

勉強会に参加したり、ビジネス界からスポーツ組織の外部理事になった、立場の似ている女性の先輩たちに相談したりして、意見を伺っています。

最終的に決めるのはいつも自分ですが、大きな決断をするときには家族や仕事の仲間などに相談し、背中を押してもらっています。

選び方

無理をせず、効率化をはかる

子育て、仕事、役員:三足の草鞋をどう履きこなす?

1日は24時間しかありませんので、自分のキャパシティーを超えてしまうものは引き受けないほうがいいです。無理だと思うものは疲弊するだけなので、やめたほうがいいです。

1つひとつの時間を短くする方法もありますが、私の場合は、効率良く時間を使うために子育て、スポーツ、人材育成を重ねて考えています。子育てしている経験が人材育成にもつながるし、スポーツ業界を考える機会にもなります。たとえば、「こういうときにどのような声をかけたら部下は育つのだろうか」と、できるもの/ことを探す。いろいろなところに、いろいろなヒントや学びがあり、そういったことを見つけながら行動していくと、時間の使い方は変わると思います。

いろいろなものの情報をまとめるために、ツールをうまく使うこともできます。たとえば、1台の PC からさまざまなところにアクセスできるようにするとか、メールも、これはバスケット、これはサッカー、これは自己学習のためと振り分けて、情報を引き出しやすくするなどの工夫は必要です。

変革

組織論のエキスパートが考えるスポーツ組織変革の鍵

見えてきた改革ポイント

スポーツでは「勝つ」ことも重要ですが、それだけでは「サステナブル(持続可能)」なスポーツ業界にはなっていきません。

これから年間50~60万人も働ける人が減り、当然、人の取り合いになるわけです。人と組織を変えて魅力ある組織作りをしていかないと、人も採用できないし、チームも立ち行かなくなるのは目に見えています。

日本には、まだ育成方法を知らない人が育成をしている状況があります。今の時代の指導者は、単にバスケットがうまい、サッカーがうまいというだけでなく、人間性も問われるようになっています。トップリーグが模範となって、暴力・差別のない、人間性を育む場であることが認識されれば、トップの指導環境を求める親はお金を出すはずです。お金が回ってくればいい人材も集まり、スポーツ業界のレベルも上がるはずです。

組織をなかから変えていくために必要な3つのこと

組織をなかから変えていくために必要な3つのこと。それは、1つは「カルチャー」、もう1つはカルチャーをどのような理想にしていくかと明言化した「制度」、もう1つは制度を実現する「ツール」です。

制度をどのようにしたいのか、みんなで理想の姿を書けばいいのです。ツールというのも、ちょっとした知識とちょっとしたお金があれば何とでもなります。

最も難しいのはカルチャーで、風土を作るのが難しかったら、まずは自分たちの理想を明文化した制度を作り、それを実現できるようなツールを入れる。文化がないので、それを絶対に機能させないといけません。どのような文化を作っていきたいのか、1つひとつ細かい問題に対応し、それを積み重ねていく。そうするとカルチャーができていきます。それは、逃げてはいけないところです。

もちろん女性を組織に入れるのも、1つのやり方としてあると思います。今まで意見をいえなかった人でも、そのスポーツのことを何も知らないからこそいえるという強みもあると思うので、それも1つのやり方だと思っています。

組織をなかから変えていくために:経営は効率化し、情報はオープンにする

経営部分では、いろいろな情報を紐づけて、全部が一発でわかるように、思い切り効率化したほうがいいです。

その一方で、情報は良いことも、悪いことも含めて、選手やスタッフ、ファンに対して、全部オープンにしたほうが良いです。できるだけ早く伝えて、それに対して「自分たちはこういう世界を作っていきたいのだ」と理想を一緒に語るのです。そのような情報開示をし続けると、理想を持っている人、ビジョンを持っている人がそこに集まって来ます。みんなが同じ方向に行ける状態を作れるかどうかがとても大事になってきます。それができれば、変わっていけるのではないかと思います。

メッセージ

「あなた」だから選ばれた

次に理事になる人へのアドバイス

次に理事になる人には「あなただから求められています」とはっきりといいます。「どうして私なのだろう」と思ったら、「そうか、私みたいなピースがここの組織にはなかったからだ」と考えてください。自分がそこで少しでも貢献できて、お役に立てて、それに対して自分がワクワクできるなと思えるのであれば、ぜひ挑戦してみてください。だって失敗しないと上手にならないし、チャレンジしないと飛べないですからね。

うまくやろうと気負わなくていいのかな、と今、自分で自分に言い聞かせています(笑) 。