長野1998
採れたて長野通信
抜けるような青空が広がったと思ったら、今日はかなり強い雨が一日中降り続いた長野地方。オリンピックも残すところあとわずかとなり、次第に春の足音が近づいてきているのでしょうか。 さて今日は、冬季オリンピックの華、女子フィギアスケートのフリーがホワイトリングで開催されました。前半のショートプログラムでは、前評判通りアメリカの2人の10代選手、ミッシェル・クワンとタラ・リピンスキーが1、2位で並び、女王対決の行方が注目されました。結果は、切れ味のある完璧な演技で観衆を魅了したリピンスキー選手が金メダルを獲得しました。日本の荒川静香選手は13位。お疲れさまでした。
現地直送!観戦レポート ノルディック複合団体・クロスカントリー(スノーハープ)
また雨の中のレースでした
雨が降り続くスノーハープ。ノルディック複合団体のメダルが決まるクロスカントリー競技は、ハードなコンディションの中で行われました。しかし、晴天よりも雨のほうが「日本には地の利がある。技術でスキーを滑らせる日本選手には有利」という阿部コーチのコメントを聞き、取材班はトップから21秒差でスタートした日本チームの逆転メダル獲得を期待して会場にでかけたのでした。
クロスカントリー競技が行われるスノーハープは、白馬村の静かな森の中にあります。アップダウンが多くハードなコースであるうえに、この日の競技で使われたCコース(A・B・Cの3コースがある)は、きついコーナーが連続するので高い技術が必要です。
観衆は小さな窪地のようになったゴール地点を取り囲むように、そして森の中の観戦ポイントに散らばって歓声を送ります。黙々と走り続ける選手の姿が印象的なクロスカントリーですが、会場ではアップテンポの音楽とともにDJが流れてとてもにぎやか。選手の姿は自分のいる場所の近くにこないと見えませんが、ゴール地点付近では大きなビジョンがレースの模様を映し出しています。
DJの実況と、ビジョンの映像でレースが動いたことを知るたびに、大観衆がチアホーンを吹き鳴らして大きな声援を送ります。
「ケン、ツン、がんばれ!」
競技開始2時間以上も前から、雨の中で立ちつくして「運命の時」を待つ観衆の熱気には驚きました。応援にやってきたファンの人々に少し話しを聞いてきたのでご紹介しましょう。
京都から来た女の子3人組は、立命館大学の学生さんです。荻原兄弟、富井選手、森選手、それぞれの名前を顔にペインティングしていました。でも、実は「3人ともほんとは荻原兄弟のファンなんですけど、今日はチームのみんなにがんばってもらいたくて、4人の名前をペインティングしてきたんです」とのこと。オリンピックの舞台で大きなチャンスをつかんだ森選手、富井選手、そして次晴選手。健司選手に負けない大活躍で、日本中にファンを増やしてくださいね。
トップから21秒差。メダル争いをするには微妙な位置の日本ですが、3人は「ぜったい大丈夫。京都へ帰りながらお祝いするつもりですから」と、日本のメダル獲得を信じていました。
日の丸マークの帽子が目立っていた女性たち。前田洋子さんや志岐幸子さんらの仲間5人組の応援団は「荻原クンの大学の同級生なんですよ」とのこと。前田さんは通訳の仕事で長野に来ているのですが「今日は仕事より応援が大事」とスノーハープに駆けつけました。でっかい日の丸に「つん」「ケン」と荻原兄弟のニックネームを書き込んで、日本チームの健闘を祈ります。
次晴選手が3位に浮上!
午後1時。いよいよレースがスタートしました。日本の一番手は荻原次晴選手です。序盤から快調にレースを進めた次晴選手。ラストスパートで2人を抜いて3位に浮上。会場は大歓声に包まれました。自分のレースを終えて、バトンタッチした場所で雪の中に倒れ込む次晴選手。大舞台で自分の最高のパフォーマンスを発揮したのはすばらしいことです。個人戦が終わったときのインタビューで「引退も」などと発言していましたが、ぜひ、まだまだがんばって世界に挑戦してください!
2番手は森敏選手。途中で一度抜かれて4位になった森選手ですが、中盤から盛り返して抜き返し、さらに2位に2秒ほどの差まで追い上げて3番手の富井彦選手へタッチ。銀メダルまでが見えてきました。富井選手もがんばりました。トップのノルウェーは独走態勢になってしまいましたが、2位から6位くらいまでが混戦模様。このままもつれて最終走者の荻原健司選手につなげれば期待は大きくふくらみます。ところが、3km地点を前にフランスとフィンランドに交わされ5位に。目を離せない接戦に、スタンドもヒートアップするばかりです。
最初にがんばりすぎたのでしょうか。終盤、富井選手は疲れました。3.4kmをすぎてから後続の選手にもとらえられ、アンカーの荻原へは6位でタッチ。観衆が大逆転を期待して大きな声援を送ります。雨はますます強くなっているようです。この日、会場にいらっしゃった天皇・皇后両陛下も、アイアイ傘でご観戦していらっしゃいました。
5位入賞はおみごと。お疲れさまでした!
トップのノルウェーがゴールしました。荻原はどうしたんだ。会場のビジョンに映らないので、状況がよくわかりません。見えました。どうやら1人逆転して5位でゴールできるのは間違いなさそうです。ゴールに向かって、最後の直線をけんめいにスケーティングしていく荻原選手に、会場の歓声はクライマックスに達しました。
日本のメダル獲得はなりませんでした。でも、みごとな5位入賞。競技を終えた日本選手に大きな歓声が送られます。荻原兄弟の顔も満足そうです。また、続々とゴールする後続の国の選手たちにも、チアホーンはずっとなりっぱなしで応援を続けていました。
オリンピック3連覇はできませんでしたが、ノルディック複合で「世界のオギワラ」「最強の日本人」として君臨した荻原健司選手は、わたしたちにノルディックスキーの醍醐味を教えてくれました。だからこそ、この日のスノーハープには大観衆が詰めかけたのでしょう。デッドヒートが繰り広げられた激しいレースで、全力を尽くして戦った日本チームはさわやかでした。優勝したノルウェーをはじめ、各国チームに登場した若い力はすばらしかったです。
荻原健司選手(そして次晴選手)に「次のオリンピックも頼む!」と期待するのは年齢的に厳しいのかも知れませんが、1年でも長く、スキー競技を楽しんでいる荻原選手の姿を見せてください。そして、日本のノルディックチームに、荻原選手を超えるような新しい力が現れることを期待しています。
荻原健司選手、荻原次晴選手、森敏選手、富井彦選手。「おめでとう」と言わせてください。本当にお疲れさまでした。
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