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福島のり子選手(スキー・フリースタイル 女子スキークロス)
上野修選手(スキー・フリースタイル 男子モーグル)
写真提供:アフロスポーツ
『スキークロス』
写真提供:アフロスポーツ
2009年3月2日〜3月8日、福島県の猪苗代町・磐梯町で、FISフリースタイルスキー世界選手権大会が開催されます。オリンピックプレシーズンとなる今季、選手たちは、ワールドカップでのランキングに加え、2010年2月に開催されるバンクーバー冬季オリンピックの出場権がかかった同大会に照準を絞っています。
今回は、この世界選手権に出場する福島のり子選手(スキークロス)と、上野修選手(モーグル)を紹介します。
バンクーバー冬季オリンピックでは新しく、『スキークロス』という種目が加わります。ルールはシンプルで、4名または6名の選手が同時にスタートし、全長約1kmのコース上に設置されたジャンプ台やウェーブ、バンク等の障害物をクリアしながらゴールを競います。50秒前後の間に繰り広げられる抜きつ抜かれつの選手間の駆け引きは、非常にエキサイティング。観客も一緒に楽しめるスポーツです。
『スキークロス』で今最も注目されているのは、福島のり子選手。昨シーズンはワールドカップ(フランス・フライネ大会)での3位入賞をはじめ、8戦中6戦で10位以内に入り、総合5位の成績を収めました。
もともとはアルペンの大回転を得意とし、トップ選手として活躍していた福島選手が、種目を転向するきっかけとなったのは、友人に誘われて出場したスキークロスの大会(SAAB SALOMON CROSSMAX)でした。
「スキーは大学4年で辞めようと思っていたので、当時就職活動をしていました。でも遊びで出た大会で優勝してしまい、それから(スキークロスに)はまってしまって(笑)
それまでは(アルペンで)一人で滑っていたんですが、人と一緒に滑って競うのが楽しくて。自分の負けず嫌いな性格にもあっていたんだと思います」
シーズンを迎えるにあたって、体格の大きな外国人選手に当たり負けしないように筋力と持久力アップに取り組んだ他、選手間の激しい攻防を勝ち抜くメンタル面の強化にも励み、長いシーズンを乗り切る準備は万全です。身長160cmと、外国勢の中では小柄な福島選手の得意とするのはテクニカルなコース。難しいコースでのスキー操作には是非注目して欲しいそうです。
スキーのすべての要素が入っているスキークロスは、滑っていてとても楽しいと話す福島選手。この面白さを伝えられたら、と考えています。
「今回(スキークロスが)オリンピックの正式種目になったことで、自分も夢を与えられる立場になったんだ・・・・・・と思いました。まずはこの競技を知ってもらって、やりたいなと思ってくれる子どもたちが増えたら、それが一番うれしいです」
自国開催の世界選手権ではメダルを獲って、着実にオリンピックにつなげたいと意気込みます。今シーズン、表彰台での福島選手の笑顔がスキーの楽しさを伝えてくれることでしょう。
コブのある急斜面を滑り降り、途中2箇所でエアを披露する『モーグル』。1998年長野冬季オリンピックで金、2002年ソルトレークシティー冬季オリンピックで銅メダルを獲得した里谷多英選手、昨シーズンのワールドカップでモーグル初の総合優勝を飾った上村愛子選手など、女子選手の活躍が目覚しい種目です。
上野修選手は、男子ナショナルチームのトップ選手。昨シーズン、上村選手が女子で優勝したワールドカップ猪苗代大会で男子モーグル初の2位となり、地元のファンを大いに沸かせました。
モーグルは今シーズンから採点方法が変わり、コブ斜面を滑る時のターン技術がより重視されるようになりました。アルペンの盛んな長野県野沢温泉村出身で、滑りの技術には定評のある上野選手は、
「ターンは板がズレずにきれいに弧を描くのが一番得点が高いのですが、コブの中でも同じで、コブの中でしっかりターンの弧を描いているかどうかが評価されます。僕はもともとアルペンをやっていて板をズラすのはカッコ悪いと思って滑っていたので、(ルール改正は)有利になったと思います」と自信をのぞかせます。
今シーズンの目標は何と言っても、所属する“チームリステル”が拠点を置く猪苗代で開催される世界選手権。
「昨シーズン、難度点が低いエアでもそこそこの成績を残せましたが、今年はシーズンオフに集中的に練習したのでかなりエアがよくなっていますから、勝てるチャンスはあると思います」
一方、勝たなくちゃ・・・と思うと空回りしてしまうタイプと自己分析も。「ベストを尽くすことに集中します」と静かに闘志を燃やしています。
世界選手権の前には、バンクーバー冬季オリンピックの会場となるカナダ・サイプレスでのプレオリンピックにも出場しますが、「今シーズンはやっぱり猪苗代」と上野選手。
気負うことなく、目の前の目標をひとつずつ着実にクリアしていく姿勢が、2010年の舞台につながって行くに違いありません。
(編集部 2008.12.18掲載)
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