MENU ─ オリンピックを知る

CLOSE UP!

高山梨沙(スケート・スピードスケート)

写真提供:フォート・キシモト

写真提供:フォート・キシモト

2008−09 シーズン、スピードスケートワールドカップ(W杯)の日本代表に、史上初めて中学生が選ばれました。北海道・安平町立早来中学校から駒澤大学付属苫小牧高校と、いずれも橋本聖子選手の母校へと進学する高山梨沙選手です。中長距離を専門とし、日本スケート連盟のジュニア特別強化選手に名を連ねています。

高山選手は、中学進学時より頭角を現し、中学2年時には全日本ジュニア選手権総合で高校生らをおさえ史上最年少で優勝。そして今シーズンはW 杯出場を目標の一つに掲げ、代表選考レースを兼ねて開催された10 月の全日本スピードスケート距離別選手権大会に臨みました。

国内自己ベストは更新したものの、結果は1500m が11位、得意の3000mが7位。出場枠は両種目とも5名だったため、念願のW 杯は来シーズンに持ち越しかと思われましが、期待枠での代表に選ばれたのです。「あの時は嬉しいというより、本当にびっくりしました」と、高山選手はその時の心境を振り返ります。

そうして迎えたW杯では、シリーズ前半戦の日本代表として開幕戦のベルリン大会(11 月7日・8日)と2戦目のオランダ・へレンベーン大会(11 月14日・15日)の1500m と3000m にエントリー。いずれもBクラスのため、入賞というよりは、自己ベストを目指し、なにより世界の滑りを経験することを課題に臨みました。

「初めてのW杯出場で、とりあえず挑戦するという気持ちだったので、プレッシャーはありませんでした。ただ、タイム的にはもう少し上に目標をおいていたので、納得のいくレースではありませんでした」と、世界のリンクでの初感触に、悔しい思いをのぞかせながらも、「他の国の選手のレース展開を見ると、(周回を重ねても)ラップが落ちないことは勉強になりました。また、アウトコースとインコースの交差する地点でのコース取りなど、実際に滑る中で感じることがいっぱいありました」と、多くの刺激を受けて帰国しました。

ところが、その後のジュニアの大会では、W杯に出場したことが逆にプレッシャーに。1月のJOC ジュニアオリンピックカップ/全日本ジュニアスピードスケート選手権は3000mで優勝したものの、タイムは4分28秒52。10 月のW杯選考レースでの国内自己ベスト4分20 秒30と比べると、8秒以上の差がありました。また1500mは7位と優勝からは遠ざかり、同じ中学生の髙木美帆選手にその座を奪われました。

「レースは気持ち一つで変わってくると思います。“勝たなければ!負けられない!”という気持ちが強すぎてもいけないとわかりました。(1月の全日本ジュニアでは)『W杯の代表に選ばれたからにはジュニアや中学生の大会では絶対に負けられない』という気持ちを作ってしまっていました」
焦りや気負いなど、これまでは意識しなかったメンタル面の弱さも、W杯を経験したことにより克服すべき課題となりました。

全日本ジュニアで思うような結果が出せず、「すごく落ち込んだ」という高山選手。そんな一種のスランプから抜け出すきっかけを与えてくれたのは、指導者たちでした。
「『今は中学生なのだから勝ち負けは関係ない。大事なのは将来なんだよ』とアドバイスを頂き、自分の滑りをすれば、将来必ず結果がついてくるんだと考えられるようになりました」

気持ちが楽になった高山選手は、2月に行われた全国中学校スケート大会の1500mで2分04秒92の大会新で優勝。3000mでも4分22秒26と大会新を更新し、2種目を制します。

「今シーズンも記録は伸びましたが、急激な伸びではなかったんです。だから『ああ、(スケートが)楽しいな』と思うことは去年に比べたら少なかったです(笑)。でもやっぱりスケートは好きです!」と語る高山選手。

次の目標は、「今年のW 杯は期待枠だったので、今度はちゃんと結果を出して実力で(W杯に)出ること」と設定しています。また、「W杯に出場したことで、ただの夢だったオリンピックも、将来は(オリンピックで)メダルを獲りたいと思うようになりました」と、世界で戦う自分の姿を思い描くようにもなりました。

「(世界で戦うには)今の実力ではまだまだです。2014年のソチ冬季大会に向けて、来年はバンクーバー冬季大会に出場してオリンピックの舞台を経験したいと思っています。だから夏からしっかりとトレーニングを頑張ります!」と、意気込みをみせます。

日本における長距離でのメダル獲得は、1994年リレハンメル冬季大会の5000m 山本宏美選手の銅メダルのみ。15 歳にして身長163cm という、恵まれた身体の高山選手は、柔軟性を評価されているその滑りで、世界に向けて成長を続けます。

(編集部 2009.4.2掲載)